法テラスは役に立たない?その理由と対処法を解説します

法テラス

質問:法テラスは使えない、法テラスは役に立たないというネットの情報を見ました。使うにもいろんな条件があって、弁護士が選べなくて悪い弁護士にあたるからだそうです。法テラスって使い勝手が悪い制度なんですか?

法テラスは使えない、役に立たない、これは本当でしょうか。法テラスが役に立たないと思われているのは、おそらく①法テラスの利用条件が厳しくて法テラスを利用できない、②弁護士費用が無料だと思われている(無料なのは相談3回だけです。)、③法テラスでは弁護士を選べないと考えられていることからだと思います。

これらを弁護士の立場からご説明します。また、最後には法テラスを利用するのにおすすめの事件類型とその注意点についてもご説明します。

法テラスの利用条件が厳しい?お金がないことが条件

法テラスは平たく言うと①「毎月の収入が一定額以下で」②「資産が乏しい」方しか利用ができません。詳細は下記のとおりです。

例えば、東京大阪等生活保護一級地以外の単身世帯では、①毎月手取りが18万2000円以下(家賃を支払っている方は22万3000円以下)であって、②資産が180万円以下(なお医療費、教育費などの出費がある場合は相当額が控除されます。)であることが基準となっています。

ちょっと超えるかもしれないというで方も、意外とクリアできる場合もありますので、法テラス地方事務所(法テラス○○という地域ごとの事務所)や法テラスを利用して契約することを考えている弁護士にご相談いただければと思います。

収入要件とは

  • 申込者及び配偶者(以下、「申込者等」)の手取り月収額(賞与を含む)が下表の基準を満たしていることが要件となります。
  • 離婚事件などで配偶者が相手方のときは収入を合算しません。
人数手取月収額の基準 注1家賃又は住宅ローンを負担している場合に
加算できる限度額 注2
1人18万2,000円以下
(20万200円以下)
4万1,000円以下
(5万3,000円以下)
2人25万1,000円以下
(27万6,100円以下)
5万3,000円以下
(6万8,000円以下)
3人27万2,000円以下
(29万9,200円以下)
6万6,000円以下
(8万5,000円以下)
4人29万9,000円以下
(32万8,900円以下)
7万1,000円以下
(9万2,000円以下)

注1:東京、大阪など生活保護一級地の場合、()内の基準を適用します。以下、同居家族が1名増加する毎に基準額に30,000円(33,000円)を加算します。
注2:申込者等が、家賃又は住宅ローンを負担している場合、基準表の額を限度に、負担額を基準に加算できます。居住地が東京都特別区の場合、()内の基準を適用します。

資産要件とは

  • 申込者及び配偶者(以下、「申込者等」)が、不動産(自宅や係争物件を除く)、有価証券などの資産を有する場合は、その時価と現金、預貯金との合計額が下表の基準を満たしていることが要件となります。(※無料法律相談の場合は、申込者等の有する「現金、預貯金の合計額」のみで判断します。)
  • 離婚事件などで配偶者が相手方のときは資産を合算しません。
人数資産合計額の基準 注1
1人180万円以下
2人250万円以下
3人270万円以下
4人以上300万円以下

注1:将来負担すべき医療費、教育費などの出費がある場合は相当額が控除されます。(無料法律相談の場合は、3ヵ月以内に出費予定があることが条件です。)

法テラス 無料の法律相談を受けたい

法テラスは無料で弁護士が頼めるんじゃないの?立替えだけです

法テラスは相談が3回まで無料なだけです。弁護士費用はかかります。ですがその弁護士費用は相場よりかなり低額に抑えられており、法テラスが立て替え払いをしてくれて、依頼者が法テラスに対し毎月5000円~の分割返済をすればいいという制度になっています。無理のない返済ができると思います。

この弁護士費用が抑えられているという点で、弁護士側としては不満があるわけです。関連記事はこちら「法テラスに対する弁護士の本音は??」。

ただ、法テラスの弁護士費用が相当低額で抑えられているといってもそもそも法テラスを使えば無料だと思っている方もいそうですからね。法律相談3回までが無料なだけです。

法テラスでは弁護士が選べない?2つの方法があります

法テラスでは弁護士が選べないという声も聞かれますが半分正解で半分不正解です。

まず法テラスを利用できる弁護士は、法テラスと基本契約を締結してる弁護士(もしくは法テラス専属のスタッフ弁護士)に限られてしまいます。法テラスと基本契約を締結していない弁護士も多くいます。ですから日本中の弁護士全員の中から選べるわけではありません。その意味で法テラスでは弁護士を選ぶことはできませんが、それでも法テラスと基本契約を締結している弁護士は、たくさんいます。その中から選べば良いだけです。

そして、法テラスは無料相談が3回までできるのです。これは裏を返せば、この相談を利用すれば弁護士3名に会って相談ができるのです。つまり弁護士を選ぶチャンスが3回もあるのです。これを利用しない手はないと思います。

また、例えば市町村の無料法律相談ってありますよね。これを利用して弁護士に相談してその弁護士に「先生は法テラスを利用して契約ができますか?」と聞いてみるのもいいでしょう。また地域の法律事務所(街弁)の相談を利用して、その弁護士に「先生は法テラスを利用して契約ができますか?」と聞いてみるのもいいでしょう。こうやって自分で探し出した弁護士に法テラスを利用してもらう方法を「持ち込み法テラス」と言います。

まとめると、①法テラスの無料相談3回を利用する方法と②自分で弁護士を探して法テラスを利用してもらう方法(持ち込み法テラス)とで、弁護士を選ぶことが可能になるわけです。

なお、弁護士の選び方についてはこちら。関連記事「良い弁護士の選び方?コツはだめな弁護士を避けること」に記載しました。ぜひご一読を!

法テラスでおすすめの事件類型は?破産事件と離婚事件

なにがなんでも法テラスがおすすめ、というわけではありません。正直、街弁をしていて、法テラスに向いている案件とそうでない案件があるなと感じることがあります。

法テラスに向いている案件として考えられるのは、この二つの類型事件です(なお、これ以外が向かないというわけではありませんが法テラスが広く利用されていることは間違いないです。)。理由は法テラスを利用する事件として定型的に処理しやすい事件類型であって、弁護士の腕によって大きな差が生じにくいかなと思うからです。

  • 破産申立事件(個人の自己破産申立事件で、資産がなく管財事件の対象とならないもの)
  • 離婚調停、訴訟事件(子供が小さくて働けない母親の離婚や財産分与などの問題が少ないもの) 

なお、離婚調停は本人でもできるにはできるのですが問題もある点は頭に入れておいてください。関連記事はこちら「弁護士をつけずに調停をしたら失敗しました(調停調書でも強制執行ができない?)」。

それでも注意してほしい点があります

このように法テラスに向いている事件類型をご説明しましたが注意点もあります。

 法テラス破産申立事件の注意点

まず、破産申立て事件において、法テラスを利用するにあたり注意してほしい点があります。法テラスを利用するには法テラスの審査を経なければなりません。これは申し込みの時期や審査内容によって異なるのですが、審査に1か月程度時間がかかるということがあります。また通常、法テラスと契約をしなければ、弁護士は債権者(借入先)に受任通知(支払いをストップさせる通知)を出しません。ですので、法テラスを利用すると法テラスの審査を経て契約まで時間を要し、それまで債権者(借入先)の督促をストップさせることができないと考えた方がよいかと思います。これは通常の弁護士との契約とは異なる法テラス利用におけるデメリットだと思います。

 法テラス離婚調停事件の注意点

また離婚調停、離婚訴訟事件においても、法テラスを利用するにあたり注意してほしい点があります。離婚事件と言っても、子との面会交流事件、離婚成立までの婚姻費用分担請求事件、離婚後の養育費請求事件などほかにも関連する事件がある場合があります。その場合、別々の事件として着手金及び報酬金が加算されます。

たとえば①離婚の調停は実費20,000円+着手金110,000円が基本となり、これに加え②婚姻費用分担請求の調停として実費20,000円+着手金55,000円が加算されます(なお①の事件と関連事件扱いになり減額された結果です(110,000円の半分として55,000円))。つまり2つの事件の実費と着手金の総額は205,000円となります。こうやって事件ごとに加算されていくのです。

また婚姻費用、養育費の報酬についても2年分、10パーセント+税の報酬がかかります。

そうすると意外に高額になってしまうことがあるんですね(それでも弁護士側からすれば通常の離婚等事件よりも低額なんですが...)。離婚調停(面会交流、婚姻費用分担請求、親権)、離婚訴訟までいって着手金だけで70万円程度になったこともあります。こういった場合は法テラス利用時に弁護士に聞いて概算を教えてもらっておいた方がよいかと思います。法テラスの費用に関する疑問を解消しておくことはとても大切ですから。

 家事事件(離婚・婚姻費用分担請求・面会交流等)

法的手続の内容実費着手金
調停のみ20,000円110,000円
調停不調後の本訴35,000円(被告側の場合20,000円)165,000円
訴訟のみ35,000円(被告側の場合20,000円)231,000円

申し立てる事件ごとに費用が発生します。例えば(1)離婚調停、(2)婚姻費用分担請求調停、(3)面会交流調停の3つの事件がある場合は、(1)(2)(3)それぞれに上記表を目安に費用が発生します。しかし、(2)(3)の事件においては、(1)に関連する事件として、以下のように着手金の関連減額が発生する場合があります。

援助事件実費着手金
(1)離婚調停20,000円110,000円
(2)婚姻費用分担請求調停20,000円55,000円(基準額から50%の関連減額)
(3)面会交流調停20,000円55,000円(基準額から50%の関連減額)

事件の結果、経済的利益があった場合の報酬金は、金銭事件及び不動産事件に準じます。
養育費や婚姻費用などの扶養料を毎月決まった金額回収する場合は、2年を上限として、毎月回収する金額の10%+税を報酬金として弁護士に支払っていただきます。
相手方から当面取り立てができない場合や、経済的利益以外の利益を得た場合は、法テラスが報酬金を立て替えます。その際の報酬金目安は66,000円~132,000円です。

法テラス 弁護士費用・司法書士費用の目安

では、賢く法テラスを利用されてください!!

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