「女性」弁護士であることについて(女性弁護士の年収は?男女の差は?仕事内容は?)

弁護士

今回は「女性」弁護士であることをテーマに書いてみました。弁護士業と女性に関してツイートすると伸びるので、男女問わず、意外と皆さん、興味津々なんですね。

女性について書いたツイートがたまってきたことと、あたし自身、後輩女性弁護士の話を聞いて改めて考える機会があったので、Twitter上で皆様の意見を伺ってこの記事を書くことにしました。

女性が弁護士資格を取得することについて

女性で弁護士資格を取得すること、これは実体験としてアドバンテージです。このツイートのように弁護士資格を取得することでこの社会で生き抜いていく大きな武器を手に入れたという感じ、「生きやすくなる」ことは実感しています。

ただ、司法試験に合格しても、街弁の世界では、女性の就職問題というのはあります。合格後、最初に待ち受ける試練かもしれませんね。地方によっては人手は足りないから女性に来てほしいという声もありますし、もちろん時代によっても異なるのでしょうが、街弁で自分に合った就職先を見つけるというのは、現在も困難かもしれません。

なお、女性修習生についてのエール記事はこちら弁護士(街弁)の就職活動は結構厳しい(弁護士の就職事情、特に女性の場合)で書きました。

女性弁護士のワークライフバランス・収入等について

ワークライフバランス

女性の妊娠出産育児に関しては、どうしても収入面の減少の問題、またワークライフバランス(WLB)の問題があります。そもそも弁護士業務は勤務時間が固定されていませんし、多くは労働時間で報酬が払われる性質のものではないです。またとかく多忙になりがちでイソ弁時代は平日夜も仕事、土日休みを確保することもままならないということもあります。正直、WLBを実現することは難しい面がありますね。

そして、街弁小規模事務所におけるイソ弁の場合、おそらくその事務所のボス弁と話し合って対応を決めますので、妊娠出産育児期間に対応する制度が大手企業並みに完璧に整っているということころは少ないでしょうね。

街弁は女性が働きやすい環境ではないと危惧して、現在、インハウス(企業内等弁護士)志向を強める女性修習生、若手女性弁護士が増えているようです。これも寂しいですがしょうがないことかなと思っています。

ですが個人の知恵と工夫で乗り切る街弁業界、女性の諸先輩弁護士方から、妊娠出産休暇についてこんな話も聞きました。大昔の話ですが、ボスをはじめ周りが何とかしてくれるってある意味素晴らしい環境ですよね(いや、何とかしてくれてないですね…笑)

また、出産直前まで仕事をしていた、産後1ヶ月以内に民事事件の尋問やったとかのスーパーウーマンもこの弁護士業界にいますよね。大型民事事件で裁判所への準備書面提出がものすごく遅れていたけど、臨月で大きなお腹だったから裁判官全員に何も言われなかったわぁ!と言っていたツワモノの女性弁護士も知っています。そりゃなんも言えない(笑)

収入

また、そもそも女性弁護士の収入についてですが、伊藤塾のHP「弁護士の年収はどのくらい?収入の実態と仕事の魅力を検証しました」にも記載があります。基づく資料は「賃金構造基本統計調査の令和3年版」。あくまで独立した弁護士を除いての勤務弁護士、企業法務弁護士等の賃金ということになりますが、この結果によれば男性弁護士の平均年収が970万円、女性弁護士の平均年収が879万円ということですから、意外に男女差はなさそうです。これを見ると男女差は100万弱、民間企業ほど大きくないようですね。

賃金構造基本統計調査の令和3年版では、男性弁護士の平均年収が970万800円、女性弁護士の平均年収が879万1,000円となっています。弁護士の年収は、男性と女性とで大きな差はありません。実際、弁護士業界は、男女差なくキャリアを積み上げられる業界と言うことができます。

「弁護士の年収はどのくらい?収入の実態と仕事の魅力を検証しました」(伊藤塾)

他方で、日弁連の弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査報告書2020によると(これはアンケートに答えた弁護士登録者が母体で、勤務弁護士等のみならず独立開業した弁護士も含みます。)、所得合計の男性の平均値は1198.8万円、女性は729.6万円と男性が女性の約1.6倍となっており、男女差は大きいです。中央値(こちらが実態を表していると思います。)は男性780万円、女性570万円であり男性が女性の約1.3倍だそう。残念ですが男女差はまだ顕著といえそうです。

ただ、女性の場合は先ほど述べた通り、育児等の関係で仕事を意識的にセーブすることもありますから、その世代の収入面について、アンケート調査をしてほしかったところですね。また、Twitter上では女性弁護士は男性弁護士と結婚することが多いこと、女性弁護士の経済的理由を理由とした自殺者がいないことなども指摘がありました。

これだけでは夢のない話で終わってしまうので、あえて言いますが、個人の才覚さえあれば、街弁は男女問わず、相当額の収入を得られる可能性があるということはお伝えしたいです。

会務、行政委員などの諸活動

いやーこれは声を大にして言いたい。近年、市区町村等役所関連の仕事(行政委員)だとか会務だとか、「女性活躍」なんだののせいで、あたしたち女性は駆り出されます。重要な役割だというならまだしも、多くは女性の割合を増やしたいがための数合わせ。昔は役所関連の仕事をすれば、仕事が来るよなんて言われてましたけどね、今はそういうこともあまりないと思います。

そういった会務や行政委員の仕事が好きならまだしもですが、女性にばかり過度に負担が重なる、本当に勘弁してほしいところです。会務や会務に関する外部活動などでも女性弁護士を出さなければならないなどと言われたりで、多重会務者(弁護士会の役職についたり弁護士会の委員会を複数兼任したりすること)になってしまっているという話も聞きます。

あたしは個人的にクオータ制に意味は乏しいと思っています。作家橘玲氏の受け売りなのですが、外国での実験で女性議長を体験した村では女性を無能としてとらえなくなったと聞いて、トップを女性にすればいいという考えを持っています。

あと、余談なんですが、女性弁護士の服装って難しいですよね(笑)次のツイートは、女性弁護士の皆さん共感していただきました。もういっそのこと原色のスーツでも着ようかなやるきげんきいわき。

偉大なる女性諸先輩弁護士の方々

弁護士会の会務や懇親会などに参加すると、大御所先輩女性弁護士の貴重なお話を聞くことがあります。女性の先輩方は、今まで道なき道を切り開いてこられた方々です。女性蔑視社会を身一つで戦って生きてこられた方々です。尊敬して頭が下がりっぱなしなのですが、そのため、ちょっと大御所女性諸先輩方、怖すぎることも多いです(笑)

また、女性修習生や女性新人弁護士は、できることならば先輩女性弁護士の仕事ぶりを見ておいたほうが良いと思います。できれば複数の女性弁護士の仕事ぶりを見ておいたほうが良いです。頼りがいがあることをアピールできる男性弁護士と同じ土俵で戦う必要ってないと思いますからね。

ただですね、前述したとおり、あまりにも上の先輩方(30期代、40期代)は偉大過ぎて恐れ多くてついていけないということもしばしば。ちょっと期上の先輩(5年~10年位)ぐらいがちょうどいいのかもしれませんね。

新人の女性弁護士は「舐められる」?

女性弁護士だと、最初は、依頼者や相手方、同業者に「舐められる」と感じることがあるようです。同業の男性弁護士からのセクハラなんてひどい話も聞いたことがあります。

舐められることについて、あたしは個人的にあまり気にならなかったんですけどね。ただ、たしかに刑事弁護話ですが若い女性弁護士ってだけで見知らぬ被疑者被告人から接見要請が来たり、担当の被疑者からドラえもんのイラスト付きの接見来て来てお手紙がきたり…なんてことはありましたね。

それに舐められる、って見方を変えればそんなに悪いことではないんですよ。むしろ、裏返せば親しみやすさというメリットでもありますよね。Twitter上では女性弁護士から分からないことを書記官さんたちに親切に教えてもらえる!なんて声も聞かれました。Twitter上の書記官さんも雑談が楽しい!なんて言ってくれてます。

またさらに相手に警戒されないってことでもあります。そのため相手の本音も聞き出しやすく探りやすい。民事事件では尋問のときにも意外と役立ちましたし、刑事弁護事件の被害者との示談なんかもやりやすいなと思ったこともあります。

舐められるということは気にならなかったのですが、ただ、依頼者に心細い思いはさせてはいけないなという思いは強くありました。そんな新人時代のあたしに、元ボス弁が、ありがたい言葉を教えてくれました。たまにありがたいことを言う、それがボス弁。

後輩の女性弁護士に、自分の枠をつくらないで

「女性弁護士向きの事件」って何でしょうか。あたしはすぐに思い浮かばなかったのですが、Twitter上で同業女性弁護士に教えてもらいました。たしかに離婚系の依頼者に「女性弁護士で」と指名されたり、未成年後見人で未成年者が女性だと「女性弁護士で」と指定されたり、会社役員で「女性弁護士で」という求人があったりします。このように「女性性」に着目した事件類型は実際あるようです(なお、報酬面はいずれもあまり期待できませんね…。)。

また、最近、後輩女性弁護士と話す機会があったのですが、色々と後輩女性弁護士の話を聞いていくうちに、ああ、もったいないなという思いを抱きました。それは女性弁護士だから家事事件を集中的にやるんでしょ?という思い込みが根底にあったからです。

たしかに新人の頃を思い出せば、周囲から「やはり(女性弁護士だから)得意分野は離婚事件とかですか?」などと聞かれたものです。いままでに、あたしたちは「女性だから・・・」という声を受けて自分の型枠を作ってきたような気がするんですね。

自分の可能性に制限をかけているのは自分自身だということ、それは意識しておいたほうが良いかもしれません。

このツイートは若手の女性弁護士にお会いして、「やはり離婚事件に注力すべきですか?」と聞かれた時の話です。誤解を招くのが嫌なので念のため言いますが、離婚事件が好きなら何も言うことはないんですよ。

彼女をはじめ、後輩の女性弁護士が世間の無数の荒波を柔軟に受け流して、のびのびと自身のやりたい事件を見つけられるといいなぁと思いましたので、ご紹介しました。辛いことも、ええ、辛いこともたくさんありますが(2回言った)、「女性」も「弁護士」も楽しんでいきましょう!

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