弁護士をつけずに調停をしたら失敗しました(調停調書でも強制執行ができない?)

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質問:数年前に弁護士さんをつけずに離婚調停をして、調停がまとまりました。調停調書の条項では「相手方は、毎月、(私と子の住んでいる家の)住宅ローンを支払うことを約束する。」となっています。ですが、住宅ローン代の8万円を支払ってもらえません。相手方の給料を差し押さえたいです。強制執行できますか。

回答:給与等差押などの強制執行はできません。別途立替金請求等の民事訴訟を提起する必要があります。

最近は離婚調停など、弁護士を付けなくても本人でもできる!ということで弁護士を付けずに調停を申し立てたりするケースも増えているようですね。ただ、いたるところに落とし穴もあります。

調停調書って何ですか?

離婚調停における調停調書とは、調停手続の中で当事者である夫婦が合意した内容が記載されるもので、調停が成立したら作成されます。

私たち弁護士は、通常この「調停調書」を獲得するために調停を利用します。それほどまでに調停調書は重要なものなのです。

なぜ、調停調書は重要なのでしょうかか?それはの離婚調停の成立についての調書の記載は確定判決と同一の効力をもつからです。そして確定判決と同一の効力ということは、一方が約束を守らない場合に、他方が強制執行をする根拠となるということです。とても強力な効果をもつのが調停調書です。

本人だけで調停をするリスクとは

じゃあ、調停調書ができれば強制執行できるんですね!と思った方、大きな間違いです。

ここがむつかしいところなんですが、強制執行することができるためには、明確な文言が必要となってきます。調停調書の条項になっているからと言って必ず強制執行ができるものかは限らないのです。

たとえば、質問者の方は調停で「相手方は、毎月、(私と子の住んでいる家の)住宅ローンを支払うことを約束する。」という調停調書を作ってもらいました。

しかし、金銭の支払いについて、相手方の財産に強制執行できるような文言にするには、「毎月、毎月末日限り○○円を○○の口座に振り込んで支払う。」などといった文言にしなくてはなりません。

その上「支払うことを約束する」という条項では、「約束する」意思が示されているだけです。「支払う」意思が明示されていないため強制執行の根拠にならないとされるでしょう。

すなわち、このような文言では強制執行ができません。一般の方からすると「なんで?こんなにわかりやすくはっきりと書いてあるじゃん!」と思われるかもしれませんが、これが私たち弁護士の法的な観点(強制執行ができるか否かについての観点)からすれば、全く違うものなのです。

調停でも弁護士を付けることをおすすめします

ええ、そんなひどいと思った方、これが弁護士を付けないことを選ぶリスクなのです。私たちは何も仕事が欲しいから弁護士を付けろと言っているわけではないんです。

二度手間になったり、取り返しがつかない事態になるリスクがあるから、弁護士を付けた方がいいですよということなんです。下記ツイートはこのような事態についての注意を述べたものです。

また、裁判所と相談したのに!なんでこんな意味のない調停調書になったの?というクレームを聞くこともありました。

裁判所は紛争解決の和解(調停成立)のために落としどころを探っているだけであって、一方当事者の意向を汲んで全面的に手とり足とり叶えてくれるところではないのです。

また他の弁護士からも、本人の調停事件に途中から代理人として介入した際に、水面下で本人に不利に進んでいたことが判明したこともあり本人調停はやはりリスクがあるよね、といった声も聞かれました。

なお、下記ツイートは多くの方に読んでいただけたようです。同業者の方の賛同コメントもいただきました。みな経験があることなんですよね。

ちなみに「絵に描いた餅つき大会」というフレーズなんですがこのツイートを読んだ弁護士の方たちにちょっと受けました(笑)うちの事務所ではよく使う言葉なんですけどね(笑)。

弁護士つけず当事者でやってる調停事件のリスク。成立したけど調書は何の意味もない(ただのお約束)条項だった!ってことも多々あった。後で困って相談に来るんだけど執行力なんて説明しても相談者はなかなか理解できない。絵にかいた餅つき大会よ。弁護士に相談もしないリスクは理解してほしい。

@onbensecond

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