取り決めは「大学」入学だけど「専門学校」に入学した場合の養育費はどうなるの!?(大学と専門学校、養育費は同じ扱い?)

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質問:家庭裁判所で、昔、離婚の調停を申し立てて、話がまとまり、調停調書をつくりました。そこには子供の養育費についての取り決めがあり、大学に入学した場合は大学卒業月まで月額4万円を支払うとあります。しかしずいぶん前から支払われなくなりました。給与とか差押できますか?文言は大学進学なんですが子供が実際に進学したのは、大学ではなくて専門学校です。

質問者さんはすでに離婚について調停を申し立てて、養育費等の調停調書までつくってあります。過去の養育費滞納分について、養育費について調停調書があれば相手方の給与等を差押することができます。そのため、あたしは法テラスを利用したうえで債権を差押えるという債権差押え事件を受任いたしました。※なお、本記事は実際にあった事案の事実を変更しております。

ところが、差押申立の準備を行った(具体的には、大学入学という停止条件が成就したという執行文付与申請という手続きを行った)ところで裁判所から突っ込みが入りました。調停調書の文言が「大学」となっているので、実際は「専門学校」入学である以上、難しいのではないか?ということです。すなわち裁判所から差押ができない(執行文付与できない)のではと示唆されたということです。

そこであたしは専門学校は資格を取得する目的のものであることから通常の短大と社会的役割が変わらないこと、そもそも20歳を超えて養育費の延長を認めた趣旨が①親の経済的状況、学歴等から子の大学等進学が想定されること②子が学生であり就学中である場合、生活費の獲得は困難であることをあげて、①②の趣旨は専門学校であっても変わるところはないといった内容の意見書を提出いたしました。

もちろん申立にあたり学校のパンフレットや入学証明書なども添付して補足していました。

これを受けて、裁判所は執行文を付与してくれて、無事、給与差押手続きを進めることができ、差し押さえをされてびっくりした相手方が直接依頼者の口座に支払いをしてくれて、養育費の滞納分を回収することができました。

よって本件の回答としては、大学との取り決めがあっても、「専門学校」進学でも過去の養育費滞納分の差し押さえができたのですが、この事案はあくまで過去の事案で現在はどうかわかりませんし、当該手続きやその裁判所によって判断が異なることもあろうかと思いますのでご注意ください。

専門学校進学もポピュラーになっている時代なんですから、こういった争点をうまないためにも、調停や公正証書における養育費の取り決め時においては「大学に入学した場合は」ではなく、「大学及び専門学校に入学した場合は」という文言にしておいた方が良いでしょうね。

まあ、本件において債権回収ができたのでめでたしめでたしなのですが、法テラスを利用した場合、経済的利益が3000万円以下であればその経済的利益の10%及び税が報酬(弁護士費用)として決められています。

事件の結果、経済的利益を得た場合は、上記費用とは別に報酬金が発生します。経済的利益3000万円までは、入金額の10%+税が報酬金の目安になります。3000万円を超える部分についての報酬金目安は、6%+税です。
相手方から当面取り立てができない場合は、法テラスが報酬金を立て替えます。その際の報酬金目安は66,000円~132,000円です。

法テラスHP 弁護士費用・司法書士費用の目安

これは、法テラスを利用した依頼者から弁護士に対して、支払われることになっています。これが請求しても依頼者から、支払われませんでした。結局報酬をとりっぱぐれてしまったのです(法テラスが支払ってくれるわけではないのです。)。

あたし自身としてはやるべきことをやったので、未だに怒っている出来事なのですが、こうしてネタにすることもできたので無理やり消化させています。ふー。

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