弁護士(街弁)って一般にどういった仕事人生を送るんですか
弁護士といっても街弁(街にある弁護士1名~5名程度の小規模法律事務所の弁護士)ですが、何となく弁護士人生を送るうえで共通したイベントというかターニングポイントというものがあるんですね。
もちろん人にはよるんですが、大体似たり寄ったりかなぁと思って「街弁の一生」として下記のツイートをしました(今落ち着いて考えると街弁の「半生」なんですが 笑)。するとなかなかの反響(笑)いろいろな声が寄せられたのでここで併せて紹介しようかと思います。ちなみにあたしも似たようなもんです(笑)
修習生の時代
司法試験合格後に修習生になるのですが、現在は裁判所の刑事部と民事部でそれぞれ2か月程度配属されることになります。裁判所での修習時代に様々な訴訟活動をする弁護士を見ていると「なんでこの弁護士はこんな主張をしているんだろう?」「法的に認められないのに無駄な主張をしてるもんだな。正気か。」などと謎の上から目線になってしまいます。
まあ、これはやむを得ないことではあるんですが、大まかにいうとツイートしたように修習生にとっては「弁護士が馬鹿に見える」のです。これは誰しもが通る道、流行り病、そして弁護士の仕事の一部分しか見えていないということでもあります。これは第一次反抗期とでも言いましょうか。あさはかあかさかみつけです。
弁護士登録後は漆黒時代
そしていよいよ法律事務所に所属して弁護士デビューすることになります。こうなると日々業務に追われてしまいますね。ボス弁が容赦なく仕事を振ってきて、まだ慣れない業務に右往左往の日々です。イソ弁を雇う事務所という時点で、すでに人手が足りず比較的業務量が多いでしょうから、ボス弁に大量の事件を振られパンクする新人弁護士もいます。激務の新人弁護士については「弁護士の仕事は激務なんですか?(激務の後輩弁護士シリーズ)」をお読みください。
この時代は目の前にある事件に向き合って、こなしていくだけで精一杯になります。ツイートしましたように無心の境地と言えなくもないんですね(笑)ちょっとした悟りです。
弁護士3年目になれば少しは慣れてくる
弁護士になって3年目くらいでしょうか。事件の処理の方法もなんとなくわかってきて、自信が徐々についてきます。弁護士としてやれてるんじゃないか、という自信です。そうすると余裕が出てきて、また他の弁護士の訴訟活動などが目についてくる。
そして慣れると同時にまた慢心がちょっとずつ起きてきます。他の弁護士って年数経てるだけででそんな優秀じゃないよね、ボスって言っても何でも知ってるわけじゃないし、事件についてもオレの見立ての方が当たってるよ、などです。また弁護士だけでなく、事件で当たる裁判官や検察官らにもその目は向けられます。あいつらはわかってないんだ!みたいな感じです。まるで売れない漫画家…
この弁護士等を馬鹿にする現象、これは第2次反抗期とでも言いましょうか(笑)
ちょっと前に「自由と正義」について下記ツイートしたことがあります。このツイートにもこの弁護士登録初期段階の慢心現象が共通してますね。なお、「自由と正義」とは、日弁連が毎月発刊する広報誌でして、「自由と正義」には弁護士業務に関する特集やエッセイ、研修情報、弁護士が受けた懲戒処分の要旨が公告として掲載されています。
弁護士5年目の厳しい試練
はい、弁護士5年目にして壮絶な試練が訪れます。依頼者等に背後から刺されます。何も物理的に刺されるわけじゃないんですけど、ね。
依頼者も全員が良い人ではありません。いろんな人がいます。たとえば敗訴したことが弁護士の責任ではないにもかかわらず敗訴したことの責任を負えだとか、思う通りにいかないから弁護士の着手金を返せだとか難癖をつけたり、まったく理由がないにも関わらず懲戒請求をしてきたり、バリエーションは様々です。ですがこのような経験は弁護士の心に少なからず暗い影を落とします。
ちなみに5年としたのは大体登録から経験年数5年くらいの間に修羅場が発生するかなと思いましたが、5年目だったという方が多くいらっしゃいました。なんなら5年目ですが昨日刺されて凹みましたとか…。何かあるんですかね…。
また5年よりももっと早く来たという弁護士もいて、その先生方は15年目の真の悟りが早く来たようです(笑)。成長は人によって速度が違う、刺される時期によって悟りが早まるということですかね。
下記は実際にツイートをいただいた皆様のご経験の一部です。このような経験を経て、弁護士は初心に戻ります。
- 5年目で無事依頼者に刺されました。
- 5年目にして遂に依頼者から刺されました。
- 5年目です。ちょうど先日依頼者から刺されて凹んでいたところでこのツイート見て元気が出ました。
- 依頼者から「○○は無能弁護士」的な怪文書を撒かれた。
- そんなに親しくない行政書士から紹介されて民事訴訟を受任したら、訴訟の山場でその会社が反社のフロント企業だと判明した3年目の話でもしましょうか。
- 報酬踏み倒しや紛議提起されるくらいならあるけど、本格的に依頼者に刺されたことはないワイはまだまだ初心者です。 いや、てか登録直後からボス弁に刺されまくってたからなぁ。
- 2年目で最初のボスと刺しあい、4年目に依頼者から刺されそうになったところを2人目のボスがかばってくれて脱出し、5年目に脱出した先の事務所がボス同士の刺しあいで爆発四散し、6年目に依頼者から刺されましたが私は元気です。
- (刺されるのは)1回? そんなことはない。 そして、刺されて、絆創膏を貼ってまた笑うんだ。
ちなみに他の弁護士から、依頼者に刺されることについて、下記ツイートのとおりこんな声もいただきました。嘘をつかれて敗訴したぐらいでは刺されたとは言わない。なかなかきびちい世界(笑)。
弁護士10年目の余裕
さて、手痛い経験をして、経験値が飛躍的に上がり、受任する事件等で注意すべきところを体で覚えます。そして10年目になるとさすがに余裕も出てきます。
各自得意な分野をみつけて、その分野のエキスパートになったり、また弁護士業以外にも資格を取ったり、不動産業などに手を広げたり、株式等に投資をしたりもします。筋トレやマラソン、トレイルランなどの趣味に打ち込んでる弁護士も多いですね。私生活も充実している方が多い印象です。
ただここにも落とし穴。私生活のライフイベントも関係するかもしれませんし、年齢的なものかもしれません、また独立して事務所を経営しているその責任感からかもしれません、理由は様々なんですが、突然、「鬱」になったりすることもあります。くれぐれも気を付けましょう。
弁護士15年目になると
15年目になると、イソ弁だった弁護士も大体独立して経営者サイド(ボス弁)になっていることが多いです。そこで経営者として事務所を維持するために必要となるもの、それはお金です。そこで現預金教への収れんと記載しました(笑)皆が皆そうではないし、あまり真面目に取らないでくださいね。
「現預金教への収れん」て、何だよ、お金なのかよと思うかもしれませんが、実際はそれだけではありません。弁護士といえども、思うように依頼者を過酷な人生から救出できないと分かった上で、依頼者から事件を受けて正当な対価を得て、弁護士として一つ一つ丁寧かつ迅速に事件を解決し、社会の一員として歯車を回し、粛々と納税するという職業奉仕の境地のことです。
またお金については欠乏すると、まともな判断ができなくなるという論文(お金に困れば困るほどIQまで下がっちゃうらしいーパレオな男 )もあるくらいなんです。お金が欠乏すると当然のことながら頭脳労働である弁護士として良い仕事ができなくなりますし、一定のお金があることは精神の安定にもつながります。
弁護士業は激烈な人間の紛争の真っただ中に介入していく仕事なので、真面目で仕事熱心な人ほどメンタルの調子を崩してしまう傾向があると思います。嫌なことがあっても、ある程度は耐えられるんですね。お金は不幸を減らしてくれる効果があるということも身をもって感じます。
なお、Twitterで同業の先生が「経営者弁護士の一生」と題してボス弁の一生をまとめてくださいましたが、事務所拡大を目指すも従業員等に刺されミニマム経営に回帰するというものでした(笑)なるほど…
それと、現実には弁護士は自営業であり、老後の年金が低額である…これも重要ですね。ツイートを上げておきます。
これ以外にも弁護士会の会務に身をささげる先生方もいらっしゃるようで、これまた違った悟りの道に歩まれることとと存じます。南無。
以上、とある弁護士の一生でした。これからまた心境の変化があれば書いていきたいと思います。数十年後、弁護士会の会費の滞納で弁護士廃業とかだったらやだな(笑)。
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